専任技術者ってなに?~建設業許可の要件②
建設業許可をとるには、専任技術者を配置しなくてはなりません。
この記事では専任技術者について解説していきます。
専任技術者とは?
専任技術者とは、建設業許可をとろうとしている事業所が、許可を得られるだけの技術がきちんとあることを証明する為に配置を求められる者です。
専任技術者について、茨城県の建設業許可の手引きには次のように書いてあります。
「専任技術者が要求される理由は、建設工事についての専門知識を有する技術者の恒常的な技術指導の下で建設業営業が行われる体制を構築することで、建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するところにあります。」
経営業務の管理責任者は「経営・管理」の能力を担保する為、専任技術者は職人としての「技術力」を担保するための人員と考えられるでしょう。
専任技術者は営業所ごとに配置が必要です。つまり、複数の営業所をもっている事業者は各営業所ごとに専任技術者を用意しなくてはならないのです。
その上、後ほど説明しますが、専任技術者は「常勤性」を求められ、基本的には営業所に勤務していなくてはなりません。
そのため、建設業許可をとろうとしても、この専任技術者を用意できずに要件を満たせない…ということもあるのです。
専任技術者になるための資格とは?
専任技術者になるためには、十分な技術をもっていることを客観的に証明しなくてはなりません。
そのため、以下の資格要件が定められており、それをクリアすると専任技術者として登録することができます。
<専任技術者となりうる技術者資格要件>
- 一般建設業
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し,指定学科を修めて高等学校若しくは中等教育学校を卒業後5年以上の実務経験を有する者
・指定学科を修めて大学若しくは高等専門学校を卒業した後3年以上の実務経験を有する者
・10年以上の実務経験を有する者(学歴・資格を問わない)
・一定の国家資格等を有する者
・複数業種について一定期間以上の実務経験を有する者
・旧実業高校卒業程度検定規程による検定を合格後5年以上の実務経験を有する者
・旧専門学校卒業程度検定規程による検定を合格後3年以上の実務経験を有する者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し,指定学科を修めて専修学校の専門課程を卒業後5年以上の実務経験を有する者
・指定学科を修めて専修学校の専門課程を卒業した後3年以上の実務経験*2を有する者(専門士又は高度専門士を称するものに限る) - 特定建設業
・一定の国家資格等を有する者
・前記の一般建設業の専任技術者の要件のいずれかに該当する者のうち,許可を受けようとする建設業にかかる建設業で,元請として請け負った4,500万円以上(平成6年12月28日以前にあっては3,000万円,さらに昭和59年10月1日以前にあっては1,500万円以上)の工事に関して2年以上の指導監督的実務経験を有する者
※ 指定建設業(土木,建築,電気,管,鋼構造物,舗装,造園の7業種)については,この基準により専任技術者となることはできません。
・国土交通大臣の個別審査を受け特定建設業の営業所専任技術者となりうるとしてその認定を受けた者
・指定建設業7業種に関して,過去に特別認定講習を受け,同講習の効果評定に合格したもの,もしくは国土交通大臣が定める考査に合格した者
一定の国家資格等について
一定の国家資格等というのは許可をとろうとしている業種ごとに決められています。一つの国家資格で複数の業種の専任技術者要件を満たすことが出来るものもありますし、1業種の要件しか満たさないものもあります。
指定学科について
指定学科についても、許可をとろうとしている業種ごとにどのような学科が該当するのかが決められています。要件を満たすかどうかの判断は、卒業した学部や学科の名称からある程度推測は出来ますが、建設業に関係のある学問は多岐にわたり、その名称も様々です。手引きに載っていないような学科名であっても、要件を満たすと認められる可能性もありますし、逆に似ている名称だから大丈夫だろうと思っていても、該当しないと判断されてしまう可能性もあります。
学部や学科の名称だけではなく、実際に学んだ内容が適合するかどうかを見られますので、学部名や学科名だけで要件を満たすかどうかを安易に判断してしまうの避けた方が良いでしょう。管轄の土木事務所などに、事前に相談をするのが良いでしょう。
実務経験について
実務経験については、過去の請負契約書や注文書をもとに、いつからいつまで、どのような工事に関わったかという事を細かく申告しなくてはなりません。根拠がしっかりとあり、証明できる経歴の年数を全て合計して、所定の期間の実務経験を満たさなくてはなりません。
必ずしも全ての請負契約書・注文書の提出が求められる訳ではありませんが、経歴が客観的に証明できないものは経歴年数として認められません。
有資格者ではなく、実務経験のみで要件を満たそうとすると、過去10年分の経歴を客観的に証明する必要があるので、なかなか苦労することが多いです。
この実務経験は、今現在所属している事業者以外の経験も含まれます。転職を何回もしている場合は、過去の勤務先に協力してもらって、必要な記録や資料を出してもらわなくてはならない場合もあります。このようなケースでは、例え円満退職していた場合であってもなかなか頼み辛く、証明が難しいという事も多いです。
専任技術者は現場に出られない!?
専任技術者には「常勤性」が求められます。常勤性とは、休日以外の通常の出勤日は、営業時間中はその営業所に勤務していなくてはならないということを意味します。そのため、営業所の専任技術者はその営業所の常勤職員の中から選ぶことになります。
つまり、専任技術者は基本的に営業所にずっといなくてはならないので、工事現場に出てはいけないということです。工事現場に配置技術者(主任技術者や監理技術者)を置くことが義務付けられていますが、専任技術者と配置技術者は別々に用意しなくてはならないということになってしまいます。建設業許可を取得すると、工事経歴書を作成して定期的に提出をすることになりますが、そこに記載されている配置技術者と専任技術者が同一人物だと「専任技術者は営業所にいなくてはならないはずなのに、現場の配置技術者になっているのはおかしいのでは?」と指摘される可能性があります。
しかし、実際のところそれだけの人材を確保することは容易ではありません。限られた人員の中で、専任技術者の要件を満たす人、配置技術者の要件を満たす人、さらには経営管理の要件を満たす人…とそれぞれ別の人材を用意しなくてはならないとなると、建設業者にとっては非常に大きな負担になります。
そこで、例外として専任技術者と主任技術者を兼ねる為の要件を全て満たせば、合法的に検認ができることになっています。その要件は次の通りです。
<営業所専任技術者が主任技術者を兼ねるための要件>
- 当該営業所において請負契約が締結された建設工事であること
- 工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に工事現場と営業所が近接し,当該営業所との間で常時連絡を取りうる体制にあること
- 当該工事が主任技術者等の現場への専任が必要となる工事(公共性のある工作物に関する重要な工事(個人住宅の建築を除くほとんどの工事が該当)で請負金額が3,500万円以上(建築一式工事は 7,000万円以上))でないこと
常勤役員等と専任技術者については、同一営業所内であれば兼任することは認められています。
さらに、複数の業種の専任技術者の要件を満たしている人は、同一営業所の複数の業種の専任技術者を兼任することが出来ます。
常勤役員や専任技術者、配置技術者の配置については色々な要件があり複雑ですが、ひとつずつ要件を整理していき、適法に配置が出来るように準備しましょう。
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