相続に必要な手続き⑤~遺産分割協議
誰かが亡くなった後に行う手続きを「相続手続き」と言います。
この相続手続きを自分が主体となって行うのは、ほとんどの人の場合、そう何度もあることではありません。
そのため、いざ相続手続きが必要になった場合に戸惑ったり、困ってしまうことは普通のことなのです。
「相続手続き」に着目した場合の、必要な主な手続きと大まかな流れは以下の通りです。
各段階の詳しい説明は、それぞれ解説記事を作成しておりますので、ご参照ください。
<主な相続手続き>
相続に必要な手続き①~死亡届提出
相続に必要な手続き②~遺言書の有無確認
相続に必要な手続き③~相続人・相続財産の調査
相続に必要な手続き④~相続放棄・限定承認の検討
相続に必要な手続き⑤~遺産分割協議
相続に必要な手続き⑥~相続税の申告・納付
相続に必要な手続き⑦~各種名義変更手続き
この記事では、「遺産分割協議」について説明します。
遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、読んで字のごとく、遺産を分割するための話し合いです。
誰かが亡くなり、相続が発生したら、まずは遺言書がないかどうかを確認します。もしも遺言書が見つかった場合は、基本的にはその遺言書の内容通りに相続手続きを進めることとなります。
遺言書が無かった場合、誰が、何を、どのくらい相続するかを、話し合いで決めることになります。これが遺産分割協議です。
法律では、「法定相続分」という法定相続人が相続出来る割合が決まっていますが、遺産分割協議で全員が納得したのであれば、法定相続分と全く異なる遺産分割を行っても大丈夫です。
そして、話し合いの結果を書面にまとめたものが、「遺産分割協議書」です。不動産登記や、金融機関の手続きでは、この遺産分割協議書が必要となります。
もしも遺産分割について協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停委員会に間に入ってもらい、調停手続きを行うことになります。
遺産分割協議書は必ず作らなくてはいけないの?
民法上、遺産分割協議は口頭だけでも成立するとされています。そのため、理論上は、相続人全員が納得していれば、遺産分割協議書を必ずしも作る必要はありません。
しかし、例え仲の良い家族であっても、遺産分割協議書をきちんと残しておかなかったことで後々トラブルが発生することはよくあることです。
また、実際に相続手続きをすすめる中で不都合が生じることがあります。
例えば、不動産や金融機関の名義変更手続きが必要な場合。遺言書がない場合には、基本的に遺産分割協議書の提示が求められます。
不動産の相続登記も、法定相続分で分ける場合以外は、遺産分割協議書が必要となります。
後述しますが、遺産分割協議書の作成時期には期限はありません。相続が発生してから、何年も経ってしまっていても作成することが出来ます。
しかし、遺産分割協議書の作成を先延ばしにしてしまうと、いつまでも預貯金の払い戻しが出来ませんし、不動産を処分したくなっても処分出来ません。不動産の場合は、その間ずっと固定資産税を払い続けなくてはなりません。
相続が発生した際には、遺産分割協議書の作成が必要なのかどうかをまず検討し、作成する場合はなるべく早く作成することをおすすめします。
遺産分割協議は必ず「全員参加」!
遺産分割協議は必ず法定相続人「全員」で行わなくてはならないという決まりがあります。
相続手続きを進めると、今まで全く知らなかった人物が法定相続人だと判明することがあります。会ったことも聞いたこともないような人と連絡をとって、遺産分割について話し合うのは確かに難しいことです。
しかし、だからといってその人を無視して、その人以外の法定相続人で話し合いをしてしまう訳にはいきません。話し合いがまとまり、遺産分割協議書が完成したとしても、誰か一人でも遺産分割協議に参加していない人がいると、その遺産分割協議書は無効となってしまいます。
遺産分割協議書が必要な場面(登記や金融機関手続きなど)では、必ず戸籍謄本などによって法定相続人の確認も行います。その為、誰かを除外して遺産分割協議を行ったとしても、それはすぐにバレてしまいます。
その為、遺産分割協議を行う前にしっかりと調査を行い、法定相続人を確定させなければなりません。
遺産分割協議書には「署名」「実印」「印鑑登録証明書」が必要!
遺産分割協議書を作成したら、そこに書かれた内容を全て承諾した証として、法定相続人全員が署名・押印をします。
この時に使う印鑑は、必ず実印です。
そして、法定相続人は印鑑登録証明書を合わせて提出する必要があります。
遺産分割協議書に押された印鑑の印影と、印鑑登録証明書の印影を照合することで、間違いなく本人が押印したということを確認するのです。
法定相続人の中には、今まで特に必要なかったからと、印鑑登録をしていない方がいる場合があります。その場合でも、印鑑登録証明書が免除されることはありませんので、相続手続きのために印鑑登録を行ってもらう必要があります。
提出先にもよりますが、手続きに使用する印鑑登録証明書は「発行から3か月以内のものでないといけない」と定められていることがあります。
早めに印鑑登録証明書を取得して、他の相続人の準備を待っている間に期限切れになってしまうと、再取得する手間とお金がかかってしまいます。
印鑑登録証明書の取得のタイミングは、相続手続きの進捗状況をみながら見極めましょう。
遺産分割の期限はない!
この記事を書いている時点では、遺産分割協議の期限は法律で定められていません。極端に言えば、亡くなってから何十年も経っていても、遺産分割協議をすることが出来ます。
2023年4月に、「相続開始後10年経つと特別受益や寄与分の主張が出来なくなる」と民法が改正されます。これを、「遺産分割協議は10年経つと出来なくなる」と勘違いしている方がたまにいらっしゃいます。
確かに、10年経過して、特別受益や寄与分を主張できなくなることで、受け取れる遺産が少なくなってしまうこともあり得るので、相続が発生してから10年以内に遺産分割協議を行った方が良いです。
しかし、遺産分割協議自体は相続発生から10年経過しても可能ですので、ご注意ください。
とはいえ、遺産分割協議が遅れてしまうと、不動産の処分が出来ない、法定相続人が亡くなって相続関係が複雑になる等の問題が発生します。なるべく早めに協議をするようにしましょう。
遺言があっても遺産分割協議が出来る!?
通常、遺言書が書かれていれば、遺言書の内容に沿って相続手続きが進められます。
しかし、遺言書は遺言者一人で(最低限のルールさえ守っていれば)いつでも自由に書くことが出来ますから、相続人の希望とは全く違う内容が書かれていることもあり得ます。
遺言書の内容に法定相続人全員が納得できず、新たに話し合って全員が納得する分割方法を決めたとします。この場合、遺言書の内容ではなく、遺産分割協議書に沿って相続手続きを行うことが出来ます。
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