相続に必要な手続き②~遺言書の有無確認
誰かが亡くなった後に行う手続きを「相続手続き」と言います。
この相続手続きを自分が主体となって行うのは、ほとんどの人の場合、そう何度もあることではありません。
そのため、いざ相続手続きが必要になった場合に戸惑ったり、困ってしまうことは普通のことなのです。
「相続手続き」に着目した場合の、必要な主な手続きと大まかな流れは以下の通りです。
各段階の詳しい説明は、それぞれ解説記事を作成しておりますので、ご参照ください。
<主な相続手続き>
相続に必要な手続き①~死亡届提出
相続に必要な手続き②~遺言書の有無確認
相続に必要な手続き③~相続人・相続財産の調査
相続に必要な手続き④~相続放棄・限定承認の検討
相続に必要な手続き⑤~遺産分割協議
相続に必要な手続き⑥~相続税の申告・納付
相続に必要な手続き⑦~各種名義変更手続き
この記事では、「遺言書の有無確認」について説明します。
遺言書の有り、無しでその後の手続きが全然違う!
具体的な相続手続きを行う前に、遺言書があるかどうかを確認することはとても重要です。
なぜならば、遺言書がある場合と、無い場合で、その後の手続きの進め方が全く違うからです。
亡くなった方が遺言書を用意していた場合は、基本的には「その遺言の内容で相続する」ことになります。
遺言書が無かった場合はどうなるかというと、相続人の方全員で「話し合って相続内容を決める」ことになります。これを「遺産分割協議」と言います。
遺言書があった場合、多くの相続手続きではその遺言書さえあれば手続きを完了することが出来ます。つまり、よくある「相続人全員のハンコが必要で…」といった事態を避けられるのです。
一方で、遺産分割協議によって手続きをする場合は、まず相続人全員で協議し、その内容を「遺産分割協議書」にまとめなければなりません。
この遺産分割協議書に、相続人全員の署名と実印の押印が必要なのです。「相続でハンコ集めに苦労する」というイメージは、この遺産分割協議書の作成から来ているものです。
さらに、遺産分割協議書を作成する際は、相続人全員の印鑑証明書もセットで必要となります。その為、本人の協力を得られないと手続きは難しくなってしまうのです。
内容等のことはともかく、相続人の負担のことだけを考えれば、遺言書があった方が簡単に手続きを進められることが多いです。
また、遺言書を残すという事は、故人が何かしらの「想い」を持っていて、それを後世に託すために書いているという事です。
そういった故人の気持ちにこたえる為にも、具体的な手続きや話し合いをする前に、遺言書がないかどうか、良く探した方が良いです。
遺言には種類がある!自筆証書遺言と公正証書遺言とは?
遺言書にはいくつか種類があって、それぞれ特徴があります。
遺言書のうち、自分で作成する遺言書を「自筆証書遺言」、公証役場で証人立ち合いのもと作成し、保管も公証役場に任せる遺言書のことを「公正証書遺言」といいます。
実はこの他にもいくつか遺言書の種類はあるのですが、一般的に「遺言書を書く」と言ったらこの2種類のどちらかであると考えて特に問題ありません。
自筆証書遺言は、自分で好きな時に書いて、好きな場所に保管しておくことが出来ます。一定のルールさえ守れば、書き直しも自由です。
一方で、公正証書遺言は、公証役場で公証人が書き、公証役場で保管します。内容を書き直したい時も、公証役場に訂正か再作成を依頼することになります。
★遺言については、こちらの記事もご覧ください
一番簡単に書ける遺言!~自筆証書遺言について知ろう
安全で確実な遺言方式!~公正証書遺言について知ろう
それぞれメリットとデメリットがありますが、ここでは遺言を残された遺族の立場に立って、遺言を探すにはどうすればいいかを紹介します。
公正証書遺言の探し方
公正証書遺言を探す場合は、「遺言検索システム」を利用する方法があります。
この遺言検索システムを利用すると、昭和64年1月1日以降に作成されたものであれば、全国のどの公証役場からでも探すことが出来ます。
遺言検索を請求できる人や必要書類は、遺言者(遺言を残した人)が存命か亡くなっているかで異なります。
遺言検索システムを利用できる人
<遺言者が生きている場合>
- 遺言者本人のみ(委任状を書けば代理人による請求は可能)
<遺言者が亡くなった場合>
- 当該遺言について「法律上の利害関係」のある人
例:相続人、受遺者、遺言執行者 など
このうち、遺言者が亡くなり、その相続人本人が遺言検索システムを利用しようとした場合に必要な書類は、以下の通りです。
- 遺言者の死亡を証明する資料(除籍謄本など)
- 相続人であることを証明する資料(戸籍謄本など)
- 相続人の本人確認資料
この遺言検索システムで遺言があることが分かったら、正謄本の交付を請求したり、閲覧を請求することによって中身を確認できます。
遺言の有無だけであれば、全国どこの公証役場からでも確認することができますが、その内容の確認をする為には、遺言を作成した公証役場へ赴かなくてはなりませんでした。
相続人と亡くなった方が遠く離れた場所に住んでいる場合などは、遺言を作成した公証役場まで行くのが大変なことがあります。
そこで、平成31年4月1日から、遠方の公証役場に対しては、遺言の正謄本を郵送で請求することが出来るようになりました。
費用については、遺言を検索するだけならかかりません。
しかし、閲覧を請求したり、正謄本の交付を請求する場合は費用がかかります。
自筆証書遺言の探し方
自筆証書遺言の場合、自分ひとりで書くことが出来るため、ご家族の方が知らなくても、ご本人が家族に内緒で書いていた可能性もあります。
保管についても、遺言を書いたご自身が、好きな場所に保管しておくことが出来るので、本人以外誰も保管場所を知らないということもあり得ます。
亡くなった後、誰にも発見されず、そのまま相続手続きが終わってしまった…なんていうことも、可能性としては起こり得ます。
遺言書を書いている、書こうと思っている、といった話を生前全くしていなかったとしても、念のため、貸金庫や仏壇、タンス、書斎等を探してみるといいでしょう。
あるいは、生前懇意にしていた友人や専門家に預けてある可能性もありますので、確認してみましょう。
また、亡くなった方が「遺言書保管制度」を利用していた可能性もあります。
遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を遺言書保管所(法務局)で保管してもらえる制度の事です。令和2年7月10日から施行されている遺言書保管法によりできた、比較的新しい制度です。
この制度を利用すると、確実に安全な場所で保管できることは勿論、通常は自筆証書遺言で必要とされる「検認」という手続きが不要になるというメリットがあります。
相続人の場合は、法務局に「遺言書保管事実証明書の交付請求」をすれば、故人の遺言書が法務局に保管されているかどうかが分かります。
交付請求は、全国どこの遺言書保管所(法務局)でも行うことが出来ます。
手数料は、証明書1通につき800円かかります。
もしも、法務局に自筆証書遺言が保管されていることが分かったら、「遺言書情報証明書の交付請求」をすれば、遺言書を画像にしたものを受け取ることが出来るので、それで内容を確認します。これを、遺言書原本の代わりとして各種手続きに使用することになります。
こちらの手数料は、証明書1通につき1400円かかります。
ちなみに、相続人のだれかが遺言書情報証明書の交付を受けると、その相続人以外の全ての相続人等に対して、遺言書を保管していることを知らせる通知が届く仕組みとなっています。
この通知だけでは、遺言の内容までは分からないので、この通知を受け取った関係者は最寄りの法務局で内容を確認する手続きをとる必要があります。
また、法務局での手続きには予約が必要ですので、注意してください。
相続手続きについてのお問合せは、当事務所へどうぞ!
お客様一人一人に寄り添った対応を心がけています。
北野早紀行政書士事務所
行政書士 北野早紀
TEL 029-896-5632