亡くなった人に借金があった!相続人はどうすればいい?

相続財産で予想外に大金や財産を手に入れることがありますが、逆のパターンもあります。
つまり、相続によって巨額の負債を負うことになってしまうケースです。
この記事では、亡くなった方がマイナスの財産を残した場合、相続ではその負債はどのような扱いになるのか、相続人はどのように対応すればよいのか説明します。


亡くなった人が借金をしていた!

ある人が亡くなって、遺品の整理をしている時に、知らない契約書や督促状などが見つかり、そこで初めて故人が借金をしていたことが分かったということは、珍しいことではありません。
もしくは、借金をしていたことは知っていたけれど、本人が生前言っていた額よりも実は借金の額が多かったということもあります。

相続人からすると、この借金の返済はどうすればよいのか、代わりに自分が払わなくてはならないのかと非常に不安になると思います。


他にも本人しか知らなかった債務があるのではないかと不安…

家族が知らなかった借金があったとなると、他にもあるのではないかと不安になりますよね。
そんな時は、どうやって調べたらよいのでしょうか。

一番簡単なのは、金融業者や金融機関、カード会社などからの郵便物を調べるという方法です。借金の返済状況についてや、督促状などの封書がないか探してみましょう。
また、定期的に支払いや振込をしている記録がないか、通帳などを確認することからヒントが得られることもあります。

他の方法としては、信用情報機関で債務(借金)状況を調べるという方法があります。金融業者や銀行、信販会社は信用情報機関というものに加盟している場合がほとんどです。
その信用情報機関は、加盟業者からの情報をもとに、債務の状況(借入・返済など)、クレジットカードの利用履歴などを個人ごとに登録しています。こういった、過去にどのような取引をしたのか、取引に問題がなかったかといった記録をもとに、ローンの申し込み時やクレジットカードの審査時に信用に足る人物かどうかが審査される仕組みとなっています。

信用情報機関は、以下の3つです。信用情報機関へ相続人から情報開示請求をすれば、債務があるのかどうかといったことを調べることも出来ます。

  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 一般社団法人全国銀行協会、全国銀行個人信用情報センター(全銀協)

ただし、信用情報機関の調査で100%完璧に把握できるとは限りません。個人間での賃借もあるかもしれませんし、いわゆる闇金と言われるようなところから借金をしてしまっていた場合の調査は困難です。


マイナスの財産も相続財産!?

マイナスの財産があったとしても、保証人になっていなければ関係ない…という訳ではないのです。
実は、マイナスの財産も相続財産に含まれます。つまり、相続人は預貯金や不動産と同じように、故人が残した借金についても引き継がなくてはならないのです。

そうは言っても、借金を相続したいと思う人はいません。預貯金や不動産だけ相続して、借金は他の相続人に押し付けてしまいたいと考える人もいるかもしれません。
しかし、借金のような負の遺産は、基本的に相続人全員が相続しなければならないと法律で決められています。例えば、故人がお金を借りていた場合、お金を貸した人は相続人全員に返済を求めることが出来るのです。各相続人が背負わなくてはならない借金の額は、各人の法定相続分に応じています。つまり、法定相続分が1/2の人は借金についても1/2、1/3の人は借金も1/3を背負わなくてはならないのです。


誰かが代表して借金を返済…できる?

では、相続人の間で話し合いをして、誰か一人がまとめて返済することにしたり、返済額の割合を変えることにした場合はどうでしょうか。法定相続分ではなく、遺産分割協議をして遺産の分割方法を決めた場合、相続する遺産が多い人は借金の負担額も多くしてほしいと考えることは自然な事です。
この場合、相続人の間で借金の負担割合を話し合うことは出来ます。ただし、その結果は、お金を貸した人には効果が及びません。
どういうことかというと、例えば相続人A、B、Cの3人の間で話し合いをし、借金はAが全部相続してAが全て返済するということで話がまとまったとします。しかし、お金を貸していた側は、A、B、Cそれぞれに各法定相続分の借金を取り立てることが出来るのです。たとえBが、「Aが全て払うことになっている」と言ったとしても、それは通じません。自分の法定相続分の借金は返済する義務があります。

では、話し合いで返済割合を決めても意味がないのかというと、そういう訳でもありません。もしも、上記の例でBが貸主にお金を返済した場合は、BはAに対してその分のお金を請求することが出来ます。
債権者(お金を貸した人)が話し合いの結果を了承して、Aだけに請求するようにしてくれる場合もあるかもしれませんが、それは債権者の自由です。
つまり、負の遺産について相続人間で話し合いをした場合、その結果は相続人の間(身内)では効力がありますが、債権者(お金を貸した側)に対しては効力がないということです。
「Aが払うって決めたから私はもう関係ない!」は債権者に対しては通らないのです。


借金が多い!どうすればよい?

故人が残した借金が多くて、とてもじゃないが返済できない…という場合はとても困ってしまいますね。
この場合、まず最初に自分が相続するプラスの財産とマイナスの財産の額を計算してみましょう。プラスの財産よりも、マイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄を検討してみてください。

相続放棄とは、読んで字のごとく、相続する権利を放棄する事です。相続放棄をすることで、「最初から相続人ではなかった」扱いとなりますので、借金を返済する義務もなくなります。
しかし、相続放棄をするとプラスの財産についても放棄することとなるので、もしも預貯金や不動産などの相続権があった人でも、相続出来なくなります。相続放棄をするものとしないものを分けることは出来ないので、借金だけ相続放棄するということも出来ません。
借金があると分かってすぐに放棄してしまい、後で多額の遺産を相続出来たことが分かった…なんていうことがないように、相続放棄をした方が良いのか、それとも、多少の借金を背負っても遺産を相続した方が良いのか、よく検討しましょう。

相続放棄をする時は、故人が住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に書類を提出します。期限が決まっており、自分が相続人だと知ったときから3か月以内に手続きをしなくてはなりません。もしもこの期限が過ぎてしまうと、相続を承認したものとみなされ、相続放棄が出来なくなってしまいますので、注意しましょう。

★相続放棄については、こちらの記事もご覧ください。
  相続に必要な手続き④~相続放棄・限定承認の検討


故人の借金で困ったら

ここまで、亡くなった方に借金などの負の遺産があった場合について紹介しました。

もしも借金があることが分かったら、どこ(誰)から借りているか、いつから借りているか、いくら借りているか、いつまでに返さなくはならないのか、などを確認しましょう。その結果、借金の返済が難しそうであれば、相続放棄を検討しましょう。
他の遺産の内容や額によっては相続放棄をすべきか否かの判断に迷うこともあります。しかし、放棄できる期間が決められているので、いつまでも悩んでいる訳にもいきません。

自分で判断が難しい場合は、専門家に相談するのも選択肢の一つです。
期限が迫ってからでは間に合わなくなってしまう可能性もあるので、余裕をもって行動するようにしましょう。

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北野早紀行政書士事務所
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