相続に必要な手続き⑦~各種名義変更手続き

相続に必要な手続き⑦~各種名義変更手続き

誰かが亡くなった後に行う手続きを「相続手続き」と言います。
この相続手続きを自分が主体となって行うのは、ほとんどの人の場合、そう何度もあることではありません。
そのため、いざ相続手続きが必要になった場合に戸惑ったり、困ってしまうことは普通のことなのです。

「相続手続き」に着目した場合の、必要な主な手続きと大まかな流れは以下の通りです。
各段階の詳しい説明は、それぞれ解説記事を作成しておりますので、ご参照ください。

この記事では、「各種名義変更手続き」について説明します。


亡くなった方の名義になっているものをまずは確認!

亡くなった方の名義で契約しているもの、所有していたものは名義変更が必要になります。
どんなものの名義変更が必要になるかは、人によってそれぞれです。
名義変更手続きが多くなる方もいれば、少ない方もいると思います。

まずは、名義変更が必要なものを調べることから始めましょう。
調べ方としては、亡くなった方への郵送物、保険関係であればその保険証券、手続きをした際の申請書等の控えなどを探す方法があります。
近年ではペーパーレス化推進の背景もあり、メールで色々なお知らせが届くことも多くなりました。その為、亡くなった方のメールの履歴が確認できるのであれば、それも確認した方が良いでしょう。

名義変更の期限は一概にはいう事が出来ませんが、気付いたらすぐに変更した方が無難です。
亡くなった方名義で定期的に支払いがされているものであれば、亡くなった後も自動引き落としなどが継続されてしまいます。
その時点で口座が凍結していた場合、引き落としが出来ずにトラブルになってしまうこともあり得ます。


名義変更が必要なものはどんなもの?

例えば、名義変更が必要なものとして、以下のようなものが想定されます。

  • 不動産
  • 預貯金
  • 株などの有価証券
  • 公共料金
  • 自動車
  • 損害保険・生命保険
  • 電話加入権
  • ゴルフ会員権

これらの名義変更を行う際に提出を求められるものは色々とありますが、代表的なものとしては遺言書や遺産分割協議書、戸籍謄本が挙げられます。
名義人となっている方が亡くなったことや、相続する方との関係を確認する為です。

必要な書類は各手続きによって異なりますし、相続発生を申告し、所定の書類を取り寄せなくてはならないケースもあります。詳しくは手続きごとに確認をして進めなくてはなりません。

次に、具体的にどのような手続きが必要か説明していきます。


不動産の名義変更

家や土地を持っていた場合

相続が発生した際の名義変更と聞いて、まず真っ先に不動産の事を思い浮かべる人は多いと思います。自宅を自己所有している場合や、田畑や山を持っている場合、賃貸不動産を所有している場合など、相続で不動産手続きが必要になるケースは非常に多いです。

不動産は、その不動産の持ち主が履歴事項証明書(登記簿謄本)で誰でも見ることが出来るようになっています。このように、その不動産についての情報やその不動産に関する様々な権利を公示する為の手続きを「不動産登記」と言います。

亡くなった方が所有していた不動産の名義は、相続人に変更しなくてはなりません。もっと具体的に言うと、登記事項のうち権利部(個人または法人の権利が記録されている部分)の変更が必要です。この、不動産の名義変更のことを「相続登記」と言います。

相続登記はしなくても良い?

実は、権利部に変更があった場合、変更することは義務ではありません。
しかし、義務ではないからと言って登記しておかないと、急遽不動産を売却したくなった時にすぐに売却できない、相続が重なった後で登記をしようとすると必要書類が膨大になり、手続きも煩雑になるなどのリスクがあります。

さらに、2024年4月には法改正で相続登記が義務化されることが決まっています。そのため、今は特に相続登記をしなくても罰則などはありませんが、いずれは必ずやらなくてはならないと考えていた方が良いでしょう。

相続登記の方法は?

相続登記の手続きは管轄の法務局で行います。
登記申請書と、遺言書や遺産分割協議書などの必要書類を法務局の窓口に提出します。必要書類は、遺言書があった場合、遺産分割協議を行った場合、相続放棄をした相続人がいる場合…など、どのように相続手続きを進めるかによって異なります。
窓口に行くのが大変な場合は、郵送でも手続きが出来ます。ただ、専門家に頼まずご自身で相続登記を行う場合、申請後補正なしで手続きが完了することは難しいです。申請書の不備や、書類の不足を指摘されることがほとんどです。その為、郵送ではなく窓口で法務局の職員に相談しながら手続きをした方がスムーズに済むかもしれません。

法務局では相続登記についての相談にも応じてくれます。ただ、相談をしたい場合は、必ず事前に予約を取ってから行きましょう。


預貯金の名義変更

金融機関に預金がある場合

銀行などの金融機関に預金を預けていない人はほとんどいないと思います。金額の多少はあれど、相続手続きが発生すると必ずと言っていいほど金融機関の手続きが必要となります。

口座の名義人が亡くなったことは、自動的に金融機関に通知される訳ではありません。相続人などが、金融機関に死亡したことを告げることで初めて金融機関が知る事となります。
金融機関が口座名義人が亡くなったと知ると、それ以降口座のお金を動かすことは出来なくなります。これが「口座凍結」と言われる状態です。
凍結した口座のお金をまた使えるようにするには、各金融機関で定められた方法で相続手続きを完了させなくてはなりません。

「名義変更」「払戻手続き(口座解約)」などの方法がある

預貯金の相続は、いくつかの方法があります。例えば、「名義変更」は、口座自体は残しておいて、名義を相続人のうちの一人に変更する方法です。「払戻手続き」は、口座を解約してしまい、預入していたお金は相続人名義の他の口座(他金融機関の口座の場合もあります)に振込をしてもらったり、現金で受け取ったりする方法です。

必要書類や手続きの手順は…?

金融機関に提出する書類や、手続きの手順は各金融機関ごとのルールに基づいて決まるので、統一されていません。
その為、預貯金がある金融機関が分かったら、それぞれの金融機関でどのように手続きを進めるのかを調べることから始めなくてはなりません。


株などの有価証券の名義変更

株や投資信託等の有価証券がある場合

有価証券は、上場株式、非上場株式、投資信託、国債などがあります。
これらを相続する場合、有価証券の種類や管理者等によって手続きの方法が変わってきます。まずは、名義人が亡くなったことを連絡し、どのように手続きを進めたらよいのか聞いてみるのが良いでしょう。
銀行などの金融機関手続きと似ている部分もありますが、有価証券特有の手続きもあります。例えば、株式や投資信託の相続の場合、相続する為に新たに口座を開設する必要がある可能性があります。


公共料金の名義変更

亡くなった方の名義で公共料金を契約していた場合

電気、ガス、水道などのライフラインの契約も名義変更する必要があります。
支払いが亡くなった方の口座からの引き落としであったり、故人のクレジットカード決済になっていると、口座凍結によって引き落としが出来なくなってしまいます。

料金の支払いが止まったらどうなる?

電気やガス、水道は、一度支払いが出来なかったら即停止されてしまう訳ではありません。停止される前に、口座振替ができなかったという旨の通知が郵送されます。
そのまま放置してしまうと、さらに「このまま支払いがされないとライフラインが止まりますよ」といった内容のお知らせが届き、その後停止される流れとなります。

名義変更の手続き方法は?

ガスや電気は、毎月発行されている「使用料金のお知らせ」に契約している会社名や連絡先が記載されています。まずはそこへ連絡し、名義人が亡くなったことを伝えましょう。
「使用料金のお知らせ」を紙で発行せず、ネット上で確認しているという方もいると思います。その場合であっても、必ず問い合わせ先の電話番号やメールアドレスがあるはずですので、ホームページ上を探してみましょう。
手続きは、電話やネット上だけで完了する場合もありますし、書面の提出が必要な場合もあります。

水道は市区町村役場や水道局が管理しています。水道だけは、民営化しておらず、公共サービスだからです。自治体のホームページなどを見ると、水道の名義変更の際にどうしたらよいのかが掲載されていることが多いです。自治体によって手続きの方法は異なり、書面の提出が必要なこともあれば、ネット上で手続きが完了することもあります。

ガス・電気・水道のいずれにしても、口座変更が必要な場合は忘れずに手続きをしなくてはなりません。たいていは、名義変更の際に口座変更が必要かどうかチェックされると思いますが、うっかり名義変更だけ済ませて口座変更が漏れてしまうと、料金の支払いが滞ってしまいます。


自動車の名義変更

自動車に乗っていた場合

亡くなった方が自動車に乗っていた場合、相続手続きが必要となります。
ここで注意が必要なのは、普段自動車に乗っていたからといって、その人が自動車の「所有者」とは限らないということです。
自動車検査証(車検証)には、「所有者」と「使用者」が誰かが必ず書いてあります。例えば、その自動車がカーリースであったり、自動車クレジット契約で所有権が留保されている場合は、「所有者」の欄に書かれるのは販売店やリース会社の名前です。そして、「使用者」の欄に実際に自動車に乗っていた方(亡くなった方)の名前が書いてあるはずです。

所有者が亡くなった方ではない場合は、所有者として書かれている販売店やリース会社へ手続き方法を確認します。

自動車の相続の場合、必要な手続きは?

所有者が亡くなった方本人の場合は、相続人が「自動車保管場所証明(車庫証明)」と「自動車の所有権承継手続き」を行います。

ただし、車庫証明は、亡くなった方と一緒に住んでいた人が相続人となり、今までと同じ場所で自動車を保管する場合は、特に手続きは不要です。

自動車の所有権承継手続きは、軽自動車であれば「軽自動車検査協会」で手続きを行い、普通車であれば管轄の運輸支局で手続きを行います。

自動車を相続する場合は、自動車保険にも注意!

多くの場合、自動車には任意の損害保険である、「自動車保険」がかけられています。これは、事故や故障などのトラブルに備えて加入するもので、実際に乗る人が誰かによって保険料が大きく変動します。
さらに、その人のライフスタイルに合わせた保険の設計が必要で、契約している内容と実際に使用している状況が異なると、最悪の場合は、いざという時に全く保険がきなくなってしまいます。
そのため、自動車を相続した際には必ず自動車保険についても確認をしなくてはなりません。

実は、自動車保険は、自動車に乗る人(被保険者)の名義変更できる範囲が決まっており、一定の条件を満たしていないと故人の保険を承継することが出来ません。自動車を相続する際は、保険会社や保険代理店に名義変更出来るか確認し、きちんと手続きを済ませておきましょう。


生命保険・損害保険の名義変更

保険契約の契約者や被保険者になっている場合

保険契約には、「契約者」と「被保険者」があります。
契約者は、その名の通りその保険を契約した人です。
被保険者は、その保険をかけられている人です。
契約者と被保険者が一致することもありますし、全く違うこともあります。亡くなった方が契約者や被保険者になっている場合、いずれにしても手続きが必要となります。

生命保険(死亡保険)の手続きについて

生命保険は、保険の内容によってとる手続きが変わります。
契約者・被保険者が共に亡くなった方の場合は、死亡保険金の請求手続きが必要となります。
契約者が故人、被保険者や保険金受取人が第三者の場合は保険契約の承継が必要です。
保険金受取人だけが故人の場合は、受取人変更手続きが必要となります。

その他の保険の手続きについて

保険には生命保険の他に医療保険、損害保険といった分類があります。
医療保険は、病気で入通院が必要となった場合などに補償される保険です。
損害保険は、火災保険や傷害保険、損害賠償保険などのことです。既に説明した、自動車保険も損害保険の一種です。
これらの手続き方法は、保険の種類や各保険会社によって様々です。書面での手続きが必要な場合もあれば、電話だけで完了してしまう場合もあります。
それぞれ、契約していた内容によって手続きが変わってくるので、契約していた保険会社に問い合わせてみるといいでしょう。

保険を契約すると、必ず保険証券というものが発行されます。紙媒体で手元にあれば、そこに問い合わせ先が書いてあるはずです。
保険証券が電子化されており、手元にない場合でも、保険会社からの何らかのお知らせ等が郵送されていると思います。そういったものを手掛かりに、契約していた保険を特定し、連絡先を調べていきましょう。


電話加入権の名義変更

インターネット回線ではない固定電話を使用していた場合

電話加入権とは、NTTに電話のインフラ整備の為の費用、「施設設置負担金」を支払った人が得る、「電話を引く権利」のことです。
亡くなった方がこの電話加入権を持っていた場合、相続の対象となります。
電話番号と紐づいた権利のため、引き続きその固定電話を使用し続ける場合は名義を変更する必要があります。

最近はそもそも固定電話を持つ人が減っていることと、固定電話を契約していたとしてもインターネット回線を用いたものであることが増えているので、電話加入権の手続きや取引は少なくなりました。


ゴルフ会員権の名義変更

ゴルフ会員権を持っていた場合

ゴルフ会員権とは、「ゴルフ場の運営会社が決めたルールのもと、特定のゴルフ場でプレーが出来る権利」のことです。
ゴルフ会員権を相続する場合、その方法が運営会社やゴルフ会員権の種類によって全く異なってしまうので、まずは運営会社にどのような手続きが必要か確認しなくてはなりません。

しかし、運営会社自体が経営破綻してしまっていることも多く、その場合は手続きが難しくなります。

相続人に名義変更して、自分がゴルフをする時に使うことも出来るでしょうが、そうでなければ仲介会社などを通じて処分(売却)することとなります。

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